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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1139号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人鍛冶利一の上告趣意第一點について。

しかし、刑の量定が所論のように法律審の審理對象たるべきものとしても、最高裁判所を違憲審査の最終審とする以外に、法律審としてどの範圍の權限を與うべきかの問題も裁判の審級制度の問題であって一に一立法政策に屬するものであること、從て刑訴應急措置法が所論第一三條第二項の規定を設けても国民の基本的人権を侵害するものでないことは、當裁判所の判例とするところであるから論旨は理由がない。(昭和二三年二月六日言渡、同二三年(れ)第五六號大法廷判決参照)

同第二點について。

論旨は被告人は昭和二一年六月一三日に起訴されて、事件が第二審に繋屬中、日本国憲法及び刑訴應急措置法が実施となって昭和二二年六月二七日第二審判決を受けたものであるが、右憲法及び刑訴應急措置法の実施がなかったならば舊刑訴第四一二條によって量刑の不當を理由として上告できた筈であるから、これをできなくした刑訴應急措置法一三條第二項は憲法第三一條に違反するというに歸する。しかし刑訴應急措置法第一三條第二項が憲法に違反するものでないことは前段説示のとうりであるのみならず、訴訟法は訴訟手續に關する法規であって犯罪行爲に適用すべき実體法規ではないから、訴訟法上の行爲たる上告の理由についても現実に上告手續をなすべき時に着目して規定を設けるのが當然であって、犯罪行爲の時如何により區別を設けねばならぬ理由がないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二四年三月二三日言渡、同二三年(れ)第一二二一號大法廷判決参照)從て或犯罪行爲が起訴せられた後に審級制度に變更があり又は上告理由が制限されても別段憲法違反の問題を生じないのである。それ故上告の理由は起訴の時に行われていた法律によって定められるべきであるということを前提として、刑訴應急措置法第一三條第二項が憲法第三一條に違反するという論旨は理由がない。

同第三點について。

刑訴應急措置法附則第四項は、上告の理由について、舊刑事訴訟法によるか右措置法によるかを辯論終結の時を標準として區別したもので、同種の一群の事件は一團として法律上平等に取扱われており、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により區別したものではない。それ故右附則第四項が憲法第一四條に違反するという論旨は理由がない(昭和二三年七月七日言渡同二二年(れ)第一八八號大法廷判決及び前記昭和二三年(れ)第一二二一號大法廷判決参照)

よって、刑訴施行法第二條、舊刑事訴訟法第四四六條に則り主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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